ふと思い出した体験談を紹介します。
平成15年の11月に実際に起きたことです。
以前より原付バイクに乗っているのだが、だいぶガタが来ていて、特に前のカゴが変形したり破れたりして、なんとか新品に換えなければと思っていた。でも、それなりの費用がかかるし、バイク屋に行くのも面倒くさくて、なかなか手をつけずにいた。そこで、平成15年11月の初めに、解決策を思案(というか妄想)したのが、こんなシナリオだった。
バイクのカゴを無料で交換するとしたら、100%相手が悪い状況で事故を起こして、修理代の全額を相手の保険で負担させればいい。でも、事故で自分がケガをするのはイヤだ。車体の後ろの部分だけが損傷しても意味がない。すると、やはり正面からバイクの前部だけ損傷するように、誰かの車がぶつかればよい。それも、自分がまったくケガをしないためには、バイクが道路に置いてある状態で、そこへ車が突っ込めばよい。それなら、100%相手の過失にもなる。
しかし、当て逃げされたのでは、元も子もない。善良なドライバーが、不注意で軽く正面から当たってくれなくては困る。その現場に、自分も立ち会わなければ困る。そう考えると、最も適した状況は、いつも自宅前の車道に止めてあるバイクに、誰か善良な人の車が不注意で当たってくれれば良い。でも、バイクは、左車線の端に前向きに止めているので、車がぶつかるとしたら、左の道端にあるバイクに、後ろからぶつかる可能性の方が高い。前から当たるためには、対向車線から、大きく右にそれてぶつからなければならない。こんな偶然は、ないだろうな~。
以上のような妄想をしてから、ちょうど1週間後のこと、自宅の部屋にいると、「ガシャーン」という音がした。なんだろうな~と思っていたら、しばらくして、「ピンポーン!」とインターホンが鳴った。何かと思って出てみたら、近所に住む20代のお姉さんが、申し訳なさそうな表情で、「あの~、前に置いてあるバイクに、ぶつけてしまって…」というのだ。見てみると、バイクの前部のカゴがつぶれて、バイクが倒れていた。ぶつけた車は、右のフロント部に少し損傷がある程度で、運転していたお姉さんにケガはない。バイクも、前の部分以外は、無事だった。
まあ、お互いケガがなくてよかった。その後、ぶつけた車の保険屋さんと示談が進み、全額を保険で負担しますからバイクを修理してください、ということになった。すぐにバイク屋に行き(走行は可能だった)、カゴなどの前の部分を修理・交換してもらった。修理代は保険屋さんに直接請求するとのことで、立て替える必要もなかった。めでたく、バイクの前の部分が、新品の部品で修理された。
こんなわけで、1週間前に「妄想」したことが、こと細かい状況まで含め、すべて現実になった。今まで何年もバイクは家の前の道路に置いていたけど、車にぶつけられたのは、後にも先にもこのときだけだ。ぶつけた運転手は近所の知っている人だし、事故の規模も小さくて物損だけで済んだ。バイクの損傷の場所も程度も、まったく最小限の都合の良いものだったのだ。
これは、予知と言っていいのか、思念の現実化と言っていいのか、単なる「信じられない偶然」なのか、どっちにしても、不思議で、かつ有り難い出来事であった。今でもそのバイクは乗っている。